愛育病院 小児科おかもん先生 だより Vol.379
歩くのが遅い子、大丈夫?
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
「同じ月齢のお友達はもうトコトコ歩いているのに、うちの子はまだハイハイばかりで……」というご相談は、毎月のようにいただきます。今号では、最新のCDCマイルストーン改訂やWHOの大規模研究をもとに、歩き始めの正常範囲と受診の目安を整理します。
正常範囲はどれくらい幅があるのですか
WHO Multicentre Growth Reference Studyの大規模データでは、独り歩き(unassisted walking)の獲得は「8.2〜17.6ヶ月」という非常に幅のある分布を示します [1]。およそ97%の子が18ヶ月までに独り歩きを始めるということです。
米国CDCは2022年にマイルストーンを改訂し、独り歩きの目安を従来の「12ヶ月」から「18ヶ月」に引き上げました [2]。これは「18ヶ月になっても歩けなければ異常」という意味ではなく、「18ヶ月を過ぎても歩かないなら全例スクリーニングを」という意図です。米国理学療法士学会の解説でも、この改訂は保護者の不安を増やさず、かつ遅れを見逃さないための調整だと説明されています [2]。
ポイント
- 独り歩きの正常範囲は9〜18ヶ月 [1]
- CDCは18ヶ月を受診の目安ラインに設定 [2]
- 15ヶ月で数歩、18ヶ月で安定して歩く、がおおまかな目安
歩き始めが遅い子の背景にあるもの
原因はさまざまです。多くは「個人差の範囲」や「家庭環境(ハイハイが楽しすぎる、床がすべる、抱っこが多い等)」に収まります [3]。一方で、以下のような背景が隠れていることもあります。
| 背景 | 特徴 |
|---|---|
| 体質・家族性 | 両親のどちらかも歩き始めが遅かった |
| 低筋緊張 | 全体的にふにゃっとしている、お座りも遅かった |
| 神経発達症 | 言葉の遅れ・対人面の気になりが併存 |
| 脳性麻痺 | 左右差、つま先立ち、筋緊張亢進 |
| 代謝・筋疾患 | 哺乳時から体力が続かない、血液検査で異常 |
「歩き方が遅い」だけを単独で見るのではなく、「他の運動発達(お座り・ハイハイ・つかまり立ち)」「言葉」「手の使い方」まで合わせて評価するのがポイントです [3]。
・18ヶ月を過ぎても独り歩きがない ・左右で手足の動きに明らかな差がある ・いったん歩けていたのに歩けなくなった ・全体的に筋肉がふにゃふにゃしている いずれかがあれば、早めに小児科・小児神経科にご相談ください [2][3]。
日常でできることと、受診のタイミング

おかもん先生より
外来で「歩かないんです」と来られるご家族に、まず聞くのは「ハイハイやつかまり立ちはどうですか?」です。お座りもハイハイもしっかりできていて、つかまり立ちからじっと世界を観察しているタイプの子は、ある日突然歩き出します。逆に、お座りやハイハイ自体もゆっくりだった子は、歩くのも遅れがちです。「歩くかどうか」よりも「発達全体のバランス」を見る方が、正直、情報量が多いと感じています。
家庭でできることもあります。裸足で過ごす時間を増やす、少し高さのあるソファーや椅子を「伝い歩きの練習台」にする、靴は歩き始めてから選ぶ、などです [3]。ベビーウォーカー(歩行器)は歩き始めを早めるエビデンスに乏しく、転倒事故が多いのでAAPは推奨していません [3]。
受診の目安は、まず「18ヶ月で独り歩きなし」。加えて、15ヶ月でつかまり立ちもできない場合は、18ヶ月を待たずに相談してよいと考えます [2]。
今号のまとめ
- 独り歩きの正常範囲は9〜18ヶ月(WHO大規模データ)
- CDCは2022年改訂で「18ヶ月で独り歩きなし」を受診ラインに
- 歩きだけを切り出さず、他の運動・言葉・左右差まで合わせて評価する
- 18ヶ月を過ぎても歩かない、左右差がある、退行があるときは必ず受診
愛育病院 小児科 おかもん先生
本記事の内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。