コンテンツへスキップ
MINATON
「少量でも命に関わる?」 ナッツアレルギーの正しい知識と対応
Vol.162アレルギー

「少量でも命に関わる?」 ナッツアレルギーの正しい知識と対応

ナッツアレルギーは近年増加傾向で、重症アナフィラキシーのリスクが高い食物アレルギー

アレルギー全年齢8
おかもん先生小児科専門医愛育病院 小児科

参考文献 8·Q&A 5問収録

プロフィール →

この記事のポイント

  • ナッツアレルギーは近年増加傾向で、重症アナフィラキシーのリスクが高い食物アレルギー
  • 木の実類(クルミ、カシューナッツ等)とピーナッツは植物学的に異なるが、複数に反応する子もいる
  • 微量でも症状が出ることがあり、エピペンの携帯と周囲への情報共有が不可欠

小児科おかもん先生 だより Vol.162

「少量でも命に関わる?」、ナッツアレルギーの正しい知識と対応

今号のポイント

  1. 2
    ナッツアレルギーは近年増加傾向で、重症アナフィラキシーのリスクが高い食物アレルギー
  2. 4
    木の実類(クルミ、カシューナッツ等)とピーナッツは植物学的に異なるが、複数に反応する子もいる
  3. 6
    微量でも症状が出ることがあり、エピペンの携帯と周囲への情報共有が不可欠

こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生先生です。

「クルミを食べたら顔が腫れました」「ナッツは全部ダメですか?」、近年、ナッツ(木の実)アレルギーのお子さんが急増しています。

2020年の調査では、木の実類が新規発症の食物アレルギーの原因として卵・牛乳に次いで3位にまで増加しました [1]。今回は、ナッツアレルギーの正しい知識と対応についてお伝えします。

ナッツアレルギーって何ですか?ピーナッツとは違うのですか?

ナッツアレルギーとピーナッツアレルギーは同じですか?

よく混同されますが、ピーナッツと木の実類は植物学的に全く異なります [2]

ピーナッツと木の実類の違い [2]:

具体例

ピーナッツ
落花生
木の実類
クルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ等

植物学的分類

ピーナッツ
マメ科(大豆と同じ仲間)
木の実類
各種樹木の種子

日本で多い木の実アレルギー [1][3]:

頻度(木の実内)

クルミ
最多(約60%)
カシューナッツ
2番目に多い
アーモンド
3番目
マカダミアナッツ
やや少ない
ピスタチオ
増加傾向

特徴

クルミ
2025年4月から特定原材料(表示義務化) [3]
カシューナッツ
ピスタチオと交差反応が高い
アーモンド
推奨表示(表示義務なし)
マカダミアナッツ
他のナッツと交差反応は低い
ピスタチオ
カシューナッツと交差反応が高い

ナッツは種類によって交差反応が異なります [2]。クルミとペカンナッツ、カシューナッツとピスタチオは交差反応が強いですが、すべてのナッツに反応するとは限りません。個別に評価が必要です

ポイント

  • ピーナッツはマメ科、木の実類とは別物 [2]
  • 日本で最多はクルミアレルギー [1]
  • すべてのナッツに反応するとは限らず個別評価が必要 [2]

ナッツアレルギーはなぜ重症化しやすいのですか?

ナッツアレルギーは危険だと聞きますが、本当ですか?

はい。ナッツアレルギーは食物アレルギーの中で最もアナフィラキシーのリスクが高いグループです [4]

ナッツアレルギーの特徴 [4][5]:

特徴説明
少量で発症微量の摂取でも重篤な症状が出ることがある [4]
アナフィラキシー率他の食物アレルギーより高い [4]
致死的反応食物アレルギーによる死亡例の最多原因 [5]
耐性獲得しにくい卵・牛乳に比べて耐性獲得率が低い(約10〜20%) [5]

アナフィラキシーの症状進行 [4]:

段階症状
軽症口腔内のかゆみ・違和感、部分的な蕁麻疹
中等症全身の蕁麻疹、嘔吐、腹痛、咳
重症呼吸困難、喘鳴、血圧低下、意識障害

ナッツアレルギーと診断されたお子さんには、エピペン(アドレナリン自己注射器)の処方を強くお勧めします [4]。使い方は定期的に練習してください

ポイント

  • ナッツはアナフィラキシーリスクが最も高い食物 [4]
  • 微量でも重篤な症状が出ることがある [4]
  • 耐性獲得率は低い(約10〜20%) [5]

検査はどのように行いますか?

何のナッツに反応するか、検査で分かりますか?

ナッツの種類ごとに個別に検査を行います [6]

診断のための検査 [6]:

検査内容
特異的IgE検査ナッツ種類ごとの血液検査。ただし陽性でも症状が出ないことがある
コンポーネント検査個別アレルゲン成分(Jug r 1、Ana o 3等)を測定。重症度予測に有用 [6]
皮膚プリックテスト即時反応の評価
食物経口負荷試験確定診断のゴールドスタンダード

主なコンポーネント [6]:

コンポーネント

クルミ
Jug r 1
カシューナッツ
Ana o 3
ピーナッツ
Ara h 2

意義

クルミ
陽性→全身反応のリスクが高い
カシューナッツ
陽性→重症反応のリスクが高い
ピーナッツ
陽性→臨床的反応の可能性が高い

ナッツアレルギーの検査で重要なのはコンポーネント検査です [6]。通常のIgE検査より精度が高く、重症度の予測にも役立ちます。ただし、最終的な判断は負荷試験で行います

ポイント

  • ナッツは種類ごとに個別検査が必要 [6]
  • コンポーネント検査で重症度予測が可能 [6]
  • 確定診断は食物経口負荷試験 [6]

日常生活での注意点を教えてください

どんなところに気をつければいいですか?

ナッツアレルギーは微量でも反応する可能性があるため、他の食物アレルギーより慎重な管理が必要です [7]

日常生活の注意点 [7]:

場面注意点
食品表示クルミは2025年4月から表示義務化。他のナッツは推奨表示のため表示されていないことがある [7]
隠れナッツカレー、ペスト(バジルソース)、チョコレート、焼き菓子、アイスクリーム
コンタミネーション「同じ製造ラインでナッツを使用」の表示に注意
外食中華料理、タイ料理、インド料理にはナッツが多用される
友人宅・行事お菓子交換、ハロウィン、バレンタインで意図せず摂取するリスク

エピペンの管理 [7][8]:

項目内容
携帯常に携帯。学校にも預ける
使用のタイミング呼吸困難、繰り返す嘔吐、ぐったり、顔面蒼白で迷わず使用
練習トレーナーで定期的に使い方を練習
有効期限定期的に確認し、期限前に交換

ポイント

  • クルミは2025年4月から食品表示義務化 [7]
  • 隠れナッツに注意(カレー、チョコ、焼き菓子等) [7]
  • エピペンの常時携帯と使い方の練習が必須 [7][8]

ナッツアレルギーは治りますか?最新の治療法は?

ずっとナッツを避け続けなければいけませんか?

残念ながら、ナッツアレルギーの耐性獲得率は卵や牛乳より低いです [5]。しかし、新しい治療法の研究が進んでいます

耐性獲得と治療の展望 [5][8]:

項目内容
自然耐性獲得ピーナッツ約20%、木の実約10〜20% [5]
経口免疫療法少量から段階的に増量。一部の施設で実施中 [8]
パルフォジア(ピーナッツ)ピーナッツに対する経口免疫療法薬。米国FDA承認済み [8]
抗IgE抗体(オマリズマブ)免疫療法の補助として研究中
エピカテネン療法皮膚貼付型免疫療法。臨床試験中

現時点では除去とエピペン携帯が管理の基本です [5]。経口免疫療法は一部の専門施設で行われていますが、まだ標準治療ではありません。定期的に主治医のもとで経過を見ていきましょう

ポイント

  • 自然耐性獲得は約10〜20%と低い [5]
  • 経口免疫療法の研究が進んでいる [8]
  • 現時点では除去+エピペンが管理の基本 [5]

まとめ

  • ナッツアレルギーは増加傾向。日本ではクルミが最多 [1]
  • ピーナッツはマメ科で木の実とは別物。個別評価が必要 [2]
  • アナフィラキシーリスクが最も高い食物アレルギー [4]
  • コンポーネント検査で重症度予測が可能 [6]
  • エピペンの常時携帯と使い方の練習が必須 [7][8]
  • 自然耐性獲得は約10〜20%と低いが、新治療法の研究が進行中 [5][8]

あわせて読みたい

ご質問・ご感想をお待ちしています

「こんなこと聞いていいのかな?」というギモンこそ大歓迎です。 外来受診時にお気軽にお声がけいただくか、質問フォームからお寄せください。

次号もお楽しみに。

おかもん先生

本メルマガの内容は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さまの症状についてはかかりつけの小児科医にご相談ください。

この記事は役に立ちましたか?

※ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。お子さんの症状が心配な場合は、かかりつけの小児科医にご相談ください。

関連記事

アナフィラキシーの対応とエピペン 「迷ったら打つ」が命を守る
Vol.167アレルギー

アナフィラキシーの対応とエピペン 「迷ったら打つ」が命を守る

アナフィラキシーは複数の臓器にアレルギー症状が同時に出る重篤な反応。食物が最多の原因

  • アナフィラキシーは複数の臓器にアレルギー症状が同時に出る重篤な反応。食物が最多の原因
  • エピペンは太ももの外側に打つだけ。「迷ったら打つ」が国際的なコンセンサス
全年齢
読む
アレルギーマーチ アトピーから喘息・花粉症へ進む流れを知ろう
Vol.169アレルギー

アレルギーマーチ アトピーから喘息・花粉症へ進む流れを知ろう

アレルギーマーチとは、乳児期のアトピー性皮膚炎→食物アレルギー→気管支喘息→花粉症と年齢とともにアレルギー疾患が変遷する現象

  • アレルギーマーチとは、乳児期のアトピー性皮膚炎→食物アレルギー→気管支喘息→花粉症と年齢とともにアレルギー疾患が変遷する現象
  • 皮膚バリアの破綻が経皮感作を引き起こし、マーチの起点となる。早期スキンケアが最大の予防策
全年齢
読む
「抗ヒスタミン薬で学力低下?」 “気づかない鎮静”の落とし穴
Vol.325アレルギー

「抗ヒスタミン薬で学力低下?」 “気づかない鎮静”の落とし穴

第一世代抗ヒスタミン薬の鎮静作用が学力に与える影響と薬の選び方

  • 第一世代抗ヒスタミン薬は脳に移行しやすく'気づかない学力低下'を起こします
  • 第二世代抗ヒスタミン薬(アレグラ・クラリチン等)は中枢への影響が少ない選択肢です
3〜6歳・6〜12歳
読む