愛育病院 小児科おかもん だより Vol.25
【通説検証】「インフルエンザB型はA型より軽い」
こんにちは。愛育病院小児科のおかもん先生です。
今回は「通説検証」コーナーです。インフルエンザの季節になると、外来でこんな会話をすることがあります。
「検査でB型って言われたんです。B型は軽いって聞いたので、少し安心しました」
SNSやネット記事でも「A型は重症化しやすい、B型は比較的軽い」といった情報を目にすることが多いと思います。でも、この通説は本当でしょうか? 今回は、エビデンスを確認してみましょう。
通説: 「インフルエンザB型はA型より軽い」
判定: 誤り(小児では必ずしも軽症ではなく、むしろリスクが高い場合もある)
十分な水分補給と安静が基本です。部屋の湿度を50〜60%に保つと、喉の痛みや咳が楽になります。
エビデンスを見てみましょう
1. 小児のインフルエンザ関連死亡、B型の割合が高い
エビデンス強度: Strong
米国CDCは2004〜2012年の8シーズンにわたり、小児のインフルエンザ関連死亡830例を詳細に分析しました [1]。その結果、注目すべきデータが明らかになりました。
| 型 | 死亡例数 | 死亡例の割合 | 基礎疾患なしの割合 |
|---|---|---|---|
| A型 | 649例 | 78% | 型・亜型により36〜72% |
| B型 | 165例 | 20% | 48% |
重要なポイント:
- インフルエンザB型による死亡は全体の20%(165例)を占める。流行規模を考慮すると、決して少ない数字ではない
- 特に注目すべきは、B型で亡くなった子どもの48%が基礎疾患のない健康な子どもだったこと。A型の一部の亜型(季節性H1N1: 63%、H3N2: 72%)と同様に、健康な子どもでも命に関わりうる
- 非パンデミックシーズンに限ると、B型の占める割合はさらに高くなる
この研究は、「B型だから安心」という考え方は医学的に誤りであることを示しています。
2. 脳症・神経合併症のリスク、A型とB型で差はない
エビデンス強度: Strong
日本国内でも重要なデータがあります。国立感染症研究所の報告によれば、2009〜2019年の10シーズンで、小児のインフルエンザ脳症はA型・B型ともに発生しており、型による脳症リスクの明確な差は認められていません [2]。
実際の症例報告でも:
- B型インフルエンザ脳症の重症例は複数報告されている
- けいれん重積、意識障害などの神経症状はA型・B型ともに起こりうる
- B型でも急性壊死性脳症(ANE)の報告がある [3]
「B型は脳症になりにくい」という根拠はなく、どちらの型でも神経合併症のリスクはあるのです。
3. 症状の違い、「B型は軽い」ではなく「A型と違う」
エビデンス強度: Emerging
確かに、A型とB型では臨床的な特徴に違いがあります。しかし、それは「軽い・重い」ではなく「症状の出方が異なる」という理解が正確です。
A型の特徴:
- 突然の高熱(39〜40℃)
- 全身倦怠感が強い
- 筋肉痛・関節痛が顕著
- 流行が短期間で急速に広がる
B型の特徴:
- 発熱がやや緩やか、または微熱のこともある
- 消化器症状(嘔吐・下痢・腹痛)がより多い [4]
- 呼吸器症状(咳・鼻水)が強く出ることも
- 熱が下がった後も咳や倦怠感が長引く傾向
つまり、B型は「軽い」のではなく「症状の出方が違う」 のです。特に消化器症状が強く出る分、子どもにとっては辛い場合も多いのです。
じゃあ、どうすればいい?
インフルエンザB型と診断されたときに知っておくべきポイントです:
1. 「B型だから安心」と油断しない
- B型でも重症化・脳症のリスクはある
- 特に以下のような危険サインがあればすぐ受診:
- けいれん(特に5分以上続く、繰り返す)
- 意識がおかしい(呼びかけに反応しない、目つきがおかしい)
- 呼吸が苦しそう(肩で息をする、顔色が悪い)
- 水分が全く摂れない、おしっこが半日以上出ない
2. 抗インフルエンザ薬の判断は型で決めない
- 「B型だから薬は不要」という考え方は誤り
- 発症48時間以内であれば、A型・B型いずれにも抗インフルエンザ薬は有効
- 使うかどうかは、お子さんの年齢・基礎疾患・症状の強さで判断
- 詳しくはVol.002 インフルエンザの薬と異常行動を参照
3. B型特有の症状に注意
- 嘔吐・下痢が強い場合は脱水に注意
- 経口補水液(OS-1など)をこまめに少量ずつ
- 熱が下がっても咳が長引くことがあるため、学校・保育園の出席停止基準(解熱後2日経過)を守る
4. 予防は変わらない
- インフルエンザワクチンはA型・B型の両方に効果がある
- 特に現在の4価ワクチン(A型2株+B型2株)はB型にもしっかり対応
- 詳しくはVol.003 インフルエンザワクチン徹底ガイドを参照
おしっこが半日以上出ない、泣いても涙が出ない、唇がカサカサのときは、早めに受診してください。
おかもん先生のひとこと
外来で「インフルB型です」とお伝えすると、「よかった、B型なら安心ですね」とおっしゃる保護者の方がいます。お気持ちはわかります。ネットで「B型は軽い」と書いてある記事が多いですから。
でも、私たち小児科医が最も恐れるのは、「B型だから大丈夫」と油断して、重症化のサインを見逃してしまうこと です。実際、CDCのデータでは、B型で亡くなった子どもの約半数は基礎疾患のない健康な子どもでした。脳症のリスクもA型と変わりません。
「A型は怖い、B型は軽い」ではなく、「A型もB型もどちらも注意が必要」 、これが正しい理解です。型によって安心するのではなく、お子さんの症状をしっかり観察し、危険サインがあればすぐに受診してください。それが何より大切です。

おかもん先生より
インフルエンザは毎年流行するありふれた病気ですが、お子さんにとっては負担の大きい感染症です。ワクチン接種と、症状が出たときの早めの受診を心がけてください。
今月の通説検証まとめ
通説 判定 ひとことで言うと 「インフルB型はA型より軽い」 誤り B型死亡例の48%は健康な子ども。脳症リスクもA型と同等 [1][2]
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